クズで冷徹な御曹司は、キケンな沼です

「わ、私たちってラブラブだからさ~。昨日だって先輩ったら私にね、」

「はいはい。ほら、もう始まるみたいだぞ」

「あ、本当だ。……ん?」


教壇を見ると、委員長らしき人と……時山先輩。

時山先輩の姿を見た委員の人達は「キャァ」とか「ワァ」とか感嘆の声を漏らしている。

時山先輩は可愛いし性格もいいから、学校のマドンナ的存在で、憧れている人は多い。

だけど……ご存じの通り。

私にとって最大の恋のライバルであり、


――絶対に私のものにして、家も会社も権力も、ぜぇんぶ時山家の物にするんだぁ


城ケ崎先輩を傷つけた、許せない人だ。

そんな人に私が憧れることは、一生ないと思う。


「時山先輩~!」
「先輩、今日もキレイですー!」


教室の中が騒がしくなる中、「ふぅ」とため息をついて視線を下げる。すると、同じように隣でも「はぁ」と声が聞こえた。

見ると、ため息をついたのは笹岡。

皆と同じように「羨望の目」で時山先輩を見るのではなく、私と似たような半目で先輩を見ていた。
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