クズで冷徹な御曹司は、キケンな沼です
笑いながら「ありがとう」と口パクで返事をすると、なぜか顔をそらす笹岡。その時、グキッと嫌な音がした。
「笹岡、いま首からへんな音が、」
「うるせぇ、前向け」
首の後ろに手をやる笹岡が、本当は痛いのに意地を張ってるみたいで面白くて。またフフ、と笑ってしまった。
実行委員になった時はどうしようかと思ったけど、笹岡もイイ人そうだし何とかなりそうだ。
「これからよろしくね、笹岡」
「……へいへい」
だけど――この時、私は知らなかった。
私を見る笹岡の耳が、赤く染まっていることも。
そんな私たちを、時山先輩が見ていたことも。
そして――
「あなたが丸西さんね。お話しするのは初めてかしら?」
「時山先輩……?」
委員会が終わった時。
「仲良くなれないだろうな」と思っていた時山先輩ご本人に呼び止められることも。