クズで冷徹な御曹司は、キケンな沼です

笑いながら「ありがとう」と口パクで返事をすると、なぜか顔をそらす笹岡。その時、グキッと嫌な音がした。


「笹岡、いま首からへんな音が、」

「うるせぇ、前向け」


首の後ろに手をやる笹岡が、本当は痛いのに意地を張ってるみたいで面白くて。またフフ、と笑ってしまった。

実行委員になった時はどうしようかと思ったけど、笹岡もイイ人そうだし何とかなりそうだ。


「これからよろしくね、笹岡」

「……へいへい」


だけど――この時、私は知らなかった。

私を見る笹岡の耳が、赤く染まっていることも。
そんな私たちを、時山先輩が見ていたことも。

そして――


「あなたが丸西さんね。お話しするのは初めてかしら?」

「時山先輩……?」


委員会が終わった時。

「仲良くなれないだろうな」と思っていた時山先輩ご本人に呼び止められることも。
< 130 / 291 >

この作品をシェア

pagetop