クズで冷徹な御曹司は、キケンな沼です
「ありがとう。それじゃあ、またね」


ピッ


電話が切れた瞬間、力が抜けてズルズルと体が下がる。

先輩、「わかりました」って言った。っていうことは今日、私が家に帰っても先輩はいない。ばかりか、時山先輩の家で、きっと――


「うぅ……、先輩……っ」


思わず溢れた涙に、時山先輩が「へ?」と素っ頓狂な声を出す。


「うっそ、まさか泣いてるの? これだけの事で? っぷ! あなたって本当にお嬢様?」

「どういう……?」

「お嬢様ならね、使えるものを使えるだけ使って自分で幸せを掴み取るものよ。そんな事も知らないなんて、城ケ崎くんが可哀想だわ。

社会のことも、会社のことも、生きる術すら分かってない一般人と婚約させられて……今まで頑張って来た城ケ崎くんが哀れよ……あぁ、だから見捨てられるのね」

「!」


私、見捨てられたの……? 城ケ崎先輩に?

そんな……っ。
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