クズで冷徹な御曹司は、キケンな沼です
「これから薬が効いてくるから、すぐに良くなる。城ケ崎くんが元気になっていくところ、私に見せて?」

「時山先輩……?、っ!」


なんだ? 風邪ではない体の重みを、急に感じるようになった。それに、さっきよりも明らかに熱が高くなった気がする。


「はぁ、……っ」

「ふふ」


息が荒くなっていく俺を、先輩は光悦した表情で見つめている。まさか――


「先輩、やってくれましたね……?」

「え〜、何のことかな?」


さっきの液体は、薬でもなんでもない。俺のタガを外すための罠だ。そうか、だから黒色だったのか。何を混ぜてもバレないように。

この場から早く逃げないと――その思いだけで、なんとか立ち上がる。だけど力が入らず、無様にもソファに崩れ落ちた。


ドサッ


「……っ」
「ふふ」


脱力した俺を「好機」と言わんばかりに。俺をソファに座り直させた先輩が、俺の足元へ来て床に座る。
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