クズで冷徹な御曹司は、キケンな沼です
「城ケ崎先輩……っ」
城ケ崎先輩の横顔が寂しそう。一つの恋の終わりを見ているようで、思わず胸が切なくなった。
「私にそんな事を言っていいの? あなたの会社に不利益が行くわよ?」
「既に対策済みですよ。時山家の買っている株に不穏な動きがあったと報告があり、早急に会議を開かせてもらったので」
あ、この前、先輩が「同席する会議がある」って言ったのは、この事だったんだ。
じゃあ時山先輩の企みを、早くから知ってたんだね。
「いま事を起こせば、損を貰うのはソチラですよ。先輩の好きな〝一番上の景色〟が終わっていいんですか?」
「ふん、面白くない。早く出て行って、今すぐ!」
「もちろんですよ、では」
城ケ崎先輩は、私の肩を抱いて歩き出す。だけど、ピタリと止まって、僅かに後ろを振り返った。
そして、
「一瞬の夢をありがとうございました、時山先輩」
透き通る声で、時山先輩に別れを告げた。