クズで冷徹な御曹司は、キケンな沼です

「ちょ、城ケ崎先輩? 家に着きましたって!」

「家よりも凪緒がいい」

「えぇ⁉」


今、なんて言った⁉
私ってば、間違えて別の人を連れてきちゃったの⁉

この人は本物⁉と慌てる私とは反対に、落ち着いてるのか、はたまた呆れているだけなのか。安井さんは静かにため息をついた。


「こんな状態で、よく平然と車まで歩いて来られましたね。すごい気力ですよ、本当」

「それって……?」


すると、安井さんが笑った。


「響希様は今、媚薬を飲んでいます。まぁ〝飲まされた〟と言った方が正しいですが」

「び……、媚薬⁉」


思いもよらないワードを耳にして、背筋が凍る。そうか、だから安井さんは〝先輩のピンチ〟って言ったんだね。


「どうして時山先輩は、そんな事を……」
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