クズで冷徹な御曹司は、キケンな沼です
「何しに帰って来た。まさか家出か?」

「……」


黙った私に、お父さんは何も言わない。
うぅ、「根性ナシ」とか言われるかな……?


「……」
「……あれ?」


待てど暮らせど、お父さんは何も言わない。ばかりか、口を開く前触れすらなし。


「どうして私を責めないの?」

「お前の目を見れば分かる。未来を諦めたヤツは、そんなギラついた目をしていない。多少は図太くなったようだな、安心したぞ。

で、目的は何だ」

「!」


お父さん、さすがだなぁ。たくさんの社員をまとめ、頂点にいるだけある。

お父さんの人を見る目は確か。
何一つ間違っていない。

お父さんの目には、燃えるような私の野心が、ちゃんと写っているんだ。


「城ケ崎家、時山家、そして丸西家の会社の事を教えてほしい。あとは経営に関わる、全般的な事も」

「今まで頑なに〝やらない〟と言っていたのに、どういう心境の変化だ」
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