クズで冷徹な御曹司は、キケンな沼です

その手の温かさに安心して、また泣いてしまう。

そして散々に涙を流した私は……。
泣き疲れと勉強疲れで、そのまま寝てしまった。


「すー……」

「……」


私の寝顔を見つめるお父さん。親子のゆっくりした時間が流れ始めた、

その時だった。


コンコン


「……どうぞ」


ノック音を聞いただけなのに、お父さんは「これから誰が入って来るか」分かったらしい。

まだ見ぬ人物に向けて「君が来るとは珍しい」と。資料室から体を出しながら言った。


「なんの用かな、城ヶ崎響希くん」


城ヶ崎響希くん、と呼ばれた人はカチッとしたスーツを着て、髪の毛も綺麗にセットしていて……。何だかいつもと違う雰囲気。

だけど「お久しぶりです、丸西社長」と言った声は、確かに先輩の声で――


「俺の婚約者を、迎えに来ました」


夢みたいなセリフを言ったのも、確かに城ヶ崎先輩なのだった。



❁⃘*.゚


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