クズで冷徹な御曹司は、キケンな沼です
「その位の知識でちょうどいいんですよ。会社も社会も、深く知ったってロクなことないんだから」
「子供らしからぬ発言だ、君は小さな頃からたいそう勉強したんだろうな。
凪緒なんか、」
――――おとうさんって、いつもきたない! ともだちのおとうさんみたいに、きれいなスーツきてよ!
「って作業着で仕事する俺に言ってな。でもいざ転職してスーツを着ても、十六年間知らんぷりだ。勝手なもんさ」
え!?
小さい頃の私って、そんな事を言ってたの!?
そういえば、いつかトヨばあが、
――昔の事ですが、お嬢様は〝お父さん嫌い〟でしたからねぇ
って言ってた。まさか昔の私が、そんなヒドイ事を言ってたなんて! 反抗期が度を越してるって‼
寝たフリをした顔面蒼白の私。
そして、ゲンナリ顔の先輩。
「クソガキ……じゃなくて子供時代の凪緒さんの発言はともかく。
ビギナーズラックで会社を大きくし過ぎでしょう。それは天才のする事ですよ」
天才相手に〝お父さん〟なんて……、と先輩。そんな先輩に、お父さんは再び微笑んだ。