クズで冷徹な御曹司は、キケンな沼です
「そうかもね」

「五分もしない内に、先輩は〝鬱陶しい〟って言うと思います」

「ふっ、そうかもね」


目を伏せて笑った先輩から漂う雰囲気が、トゲトゲしくなくて、柔らかい。こんなの、いつもの先輩じゃない。


「先輩、なんか変です……」

「俺もそう思うよ。だって……〝鬱陶しくてもいい〟って思うんだから」

「へ……っ?」


鬱陶しくてもいい?

それって、私がずっと先輩に引っ付いててもいいって……そう言ってくれてるの?


「……っ」


甘い言葉を信じればいいのか、それとも先輩の気の迷いだと思えばいいのか。どっちなんだろう。

私は、どっちを信じればいいの?

その時、さっきのお父さんの言葉を思い出した。


たまには素直になること――――


「……あのっ、先輩」

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