クズで冷徹な御曹司は、キケンな沼です
私って単純だから、相手の憶測とか策略とか。そんなの全然わからないんです。
今の先輩が本気なのか冗談なのか。出ない答えに、ずっと悩んでる。
だから、目の前の先輩を信じることにします。
先輩の言った言葉を、信じます。
だから先輩。
たまに……ううん。
どうか今だけ、素直になって下さい――
「前、私に言いましたよね。
〝好き嫌い以前に興味すらない〟って。
今は、どうですか?」
「今?」
「私に興味があるならキスしてください。
やっぱりないなら……すぐ降ろしてください」
「……」
お姫様抱っこをしたまま、先輩は私を見た。
この後すぐ、私は降ろされるのかな。そして一人で歩いて、一人でマンションに帰るのかな。
それは、ちょっと……
ううん、だいぶ寂しいかも。
「……なんで泣いてるの」
「だ、だってぇぇ〜っ」
未来を想像して、堪えきれない涙が溢れる。一人でトボトボ歩く私が不憫で、自分自身に同情しちゃった。
すると「はぁ」と。先輩がため息をつく。