クズで冷徹な御曹司は、キケンな沼です
「どうして先輩が怒るんですか?」
「……へぇ、自分が婚約してるって忘れたの。左手にはめてる指輪は飾りかな?」
「だ、だって、」
「もっと危機感もちなよ。ねぇ、」
凪緒――
耳元で名前を囁かれて少し経った時、チクリと痛みが走る。
それは首のあたりで、蚊に刺されたみたいに一瞬のことだった。
「今、何か、」
「凪緒はコッチに集中」
「あ、……っ」
再び唇を重ねて、キス。
食べるようなキスを何度もした先輩は、だんだん蕩(とろ)けてく私を見逃さなかった。