クズで冷徹な御曹司は、キケンな沼です
「ねぇ凪緒」
「は、はい!」
「俺と婚約してるって忘れた?
既に付き合う以上の仲でしょ、俺たちは」
「!?」
雰囲気が、変わってない!
先輩の極甘オーラが健在です!
なんで、どうして……
どうしちゃったんですか、城ヶ崎先輩!
「いやいや。ここで思い上がったら痛い目見るって、さんざん経験したでしょ私……っ」
そう。上げて落とすのが先輩の戦法だ(勝手に私が浮き沈みしてるだけだけど)。
だからこれも、きっと何かの罠!
素直に喜んじゃいけない気がする……!
「た、確かに婚約してますよねぇ。
〝形だけの〟、ですが」
「は?」
「〝は〟って……先輩が言ったんですよ?」
――俺たちの結婚は形だけだから
先輩の発言に倣って「形だけの」って言っただけ。
でも先輩が、鳩が豆鉄砲を食らったような顔してる。
私……、何か変なこと言った?