クズで冷徹な御曹司は、キケンな沼です
すると先輩が「まさかとは思うけど……」と、私から取ったマグを、コトンと机上に置いた。
「昨日、俺が言った言葉を覚えてる?」
「もちろん覚えてますよ!
〝私に興味が出た〟ですよね! へへッ」
言うと、先輩は安心したように息を吐く。
だけど、次の私の言葉を聞いて、再び固まった。
「私に興味が出てきた、ということは……
やっと次のステージに進めるってことです!」
「次のステージ?」
「はい、ズバリ……
私を好きになってもらう――!
それ以外ありませんッ」
「………」
ピシッ
石みたいに固まった先輩に、ヒビが入る。
「先輩~?」と顔の前で手を振っても反応なし。
かと思えば、急にボンッと顔を赤くして「そう言うことか」と。先輩は、口に手をやった。
「〝興味出てきた?〟って、そのままの意味だったのか。てっきり俺は……」
「先輩?」
「……っ」
先輩の向かいに座って、作ってきたココアを飲む。
喉に降りた甘さが、顔の力を緩めた。あぁ、お砂糖って癒される……。
「たまには先輩も、甘いココアどうですか?」