クズで冷徹な御曹司は、キケンな沼です
「に、にゃあ……」

「はあ?」


わけわかんねーやつ、と。笹岡が私から目を離した。

ごめん笹岡!
不審な奴でごめん!

でも私、ちょっとの間、忘れてたの。
先輩から言われてた、「あの約束」を!


――時山先輩、それと笹岡。この二人には近づかないこと


それなのに私ったら、舌の根の乾かぬ内に笹岡と登校して、あまつさえ隣同士の席に座って。

だから怒ってるんだ。

先輩の笑顔の裏には、きっと鬼の顔がベッタリ張り付いているに違いない……っ。


「今日が何事もなく終わりますようにっ」


と願う私の横で、カシャンと音がした。見ると、誰かの手から落ちたシャーペン。

「拾わなきゃ」と、何も考えず手を伸ばした――その時だった。

ゴチンッ


「いたッ」
「わ!」


どうやら笹岡とタイミングが被ったらしく、頭同士でぶつかってしまう。

笹岡も取ろうとしたってことは……これ笹岡のシャーペンかな?


「いたた、はい笹岡。どうぞ」
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