クズで冷徹な御曹司は、キケンな沼です
「いってー。どうもどうも、ありがとな」


ニッと笑う笹岡……ここまでは良かった。ここまでは。

だけど、なぜか笹岡は、この後――


「おい丸西、顔が青いぞ? 大丈夫か?」って。私の頬を掴んで、至近距離まで近づいた。

ひー、近い! 近いって笹岡ぁ!

わざとなの⁉ってくらい、先輩から丸見えの角度で私と顔を合わせてる!

こ、こんなところ先輩に見られたら……!

もがきながら、チラリと横目で先輩を見る。
するとバッチリ。先輩と目が合ってしまった。


「――……(にこっ)」

「さ、笹岡……もう大丈夫だからっ!」


ドンッと笹岡を押して、自分の机に塞ぎこむ。先輩の笑顔が怖すぎるよ!

だけど、どこまでもマイペースな笹岡は「それにしても」と。いつもの調子で、私に笑いかけた。


「丸西の婚約者、すごい人気だな」

「先輩は〝沼〟だからね……」

「なんだそりゃ」


私の答えを楽しむ一方で、「だけどさ」と笹岡。
< 215 / 291 >

この作品をシェア

pagetop