クズで冷徹な御曹司は、キケンな沼です
「丸西の表情がコロコロ変わるのって〝城ケ崎先輩〟のせいなんだろ? 丸西さ、城ケ崎と一緒にいて疲れねぇ?」
「どゆこと……?」
「まだ学生なのに婚約させられてさ。好きでもない男のことで振り回されて。丸西が大変そうなの見ると、なんか俺が嫌なんだよ」
「笹岡……」
これは笹岡の優しさ……なんだろうな。
でも、違うの笹岡。
好きでもない男に振り回されて、じゃないの。
「私……城ヶ崎先輩のこと、本当に好きだよ?」
「っ!?」
すると笹岡は、眉間に皺を寄せて「は?」と言った。いつもの笹岡らしくない、怖い雰囲気だ。
「好きって……。でも朝のキスマークだって、知らない間につけられてたんだろ?そんなの勝手じゃね?嫌ならハッキリ言えって」
「え、っと……」
なんて言ったらいいか分からない私に、拾ったシャーペンをクルクル回しながら笹岡は呟いた。
「ってか海外進出の事で城ヶ崎の評判は右肩上がりだし。いっそ婚約破棄されるかもな、丸西」
「へ……、え?」
「これから付き合いが濃くなりそうな外国人のご令嬢と……って可能性も充分あるわけだろ?
そしたら丸西も解放されるわけだし、結果ウィンウィンじゃん」
「――っ」
ガタッと。
思わず、席を立ってしまった。