クズで冷徹な御曹司は、キケンな沼です

婚約破棄――なんて。

まるで雷が落ちたように。頭のてっぺんからつま先まで、ビリビリと衝撃が走る。


「ま、丸西?」

「ちょっと……ごめん。ぬ、抜けますっ」


委員長の「トイレ?」という言葉を聞きながら、教室を出る。

教室に先輩もいるのに、こんな情けない姿をみせちゃった……。

でも、いてもたってもいられなくて。見えない恐怖から逃げるように、教室のドアを閉めた。

バタンッ


「……」


去る私を見ていのは、城ケ崎先輩。

空っぽになった机を見た後、ツツツと視線を横へズラす。すると……なんと笹岡と目が合った。


「――失礼。俺も少しだけ席を外しますね」

「あぁ、丸西さんは婚約者だもんね。彼女、調子悪いかもしれないし様子みてあげて」

「ありがとうございます」


ニコッと笑った先輩は、一番前から移動して、私の机を通り過ぎる。

すると必然的に、笹岡の隣も横切るのだけど――
< 217 / 291 >

この作品をシェア

pagetop