クズで冷徹な御曹司は、キケンな沼です
婚約破棄――なんて。
まるで雷が落ちたように。頭のてっぺんからつま先まで、ビリビリと衝撃が走る。
「ま、丸西?」
「ちょっと……ごめん。ぬ、抜けますっ」
委員長の「トイレ?」という言葉を聞きながら、教室を出る。
教室に先輩もいるのに、こんな情けない姿をみせちゃった……。
でも、いてもたってもいられなくて。見えない恐怖から逃げるように、教室のドアを閉めた。
バタンッ
「……」
去る私を見ていのは、城ケ崎先輩。
空っぽになった机を見た後、ツツツと視線を横へズラす。すると……なんと笹岡と目が合った。
「――失礼。俺も少しだけ席を外しますね」
「あぁ、丸西さんは婚約者だもんね。彼女、調子悪いかもしれないし様子みてあげて」
「ありがとうございます」
ニコッと笑った先輩は、一番前から移動して、私の机を通り過ぎる。
すると必然的に、笹岡の隣も横切るのだけど――