クズで冷徹な御曹司は、キケンな沼です

「せめて〝さん付け〟で……、なにとぞっ」

「……」


呼び捨ては無理そうなので〝さん〟付け。

先輩は少し不満そうな顔をするも、「まぁいっか」と妥協してくれた。

すると――委員会が終わったのか、ガヤガヤした声が廊下に溢れてきた。

教室から顔を出すと、委員長を始めとする皆がノートを片手に出て来る。もちろん笹岡もしかり。


「……ん?」


なんか、隣から禍々しい気が……。

恐る恐る振り向くと、なんと先輩が、怖い顔で一点を見つめていた。

その一点とは……笹岡。
え、なんで。私の見間違いかな?


「先輩、どうしました?」

「……なんでもない。ねぇ俺たちも、このまま帰ろうか」

「え、一緒に帰っていいんですか!?」


すると先輩が優しい目をして「ふっ」と笑った。
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