クズで冷徹な御曹司は、キケンな沼です
顔を上げると、にたりと笑う時山先輩。
――しまった。
メモに夢中になりすぎた、まさか見つかるなんて……!
「これは、なぁに?」
「あ、ダメ!」
私の後ろから、時山先輩の手がのびる。そして私の持っているメモを取ろうとした。
これだけは取られちゃいけない気がする――
そう思ってメモをグシャグシャにし、自分の服の中にポイと投げ入れた。正確には、下着の中に。
さすがに時山先輩も、この中に手を突っ込もうとは思わないでしょ……!
っていうか――
先輩には、聞きたいことがたくさんある!
「さっきの会話、全て聞きました。私を騙そうとしてるって……」
「……」
「私を堕とそうとする企みこそ、世間にバレたら時山家の信用にかかわるんじゃないですか?」
勝算はあった。
だって弱みを握っているのは私だし、悪いことをしているのは向こうだから。
このまま時山先輩が悔しい顔をして図書室から去る。そして私は、響希さんとお父さんに連絡をとり事実を伝える。すると時山家の策略は明るみに出て、もう両家に手出しは出来ない――これで解決。
と思っていたけど……