クズで冷徹な御曹司は、キケンな沼です
「……」


止まった足、鳴り続ける鼓動、少し速まった脈――それらが何をさしているか。俺は、もう分かっていた。


「俺は……」


凪緒のことを思うと、途端に胸が騒がしくなる。

こんな風に、いてもたってもいられなくなる。

今まで打算的な付き合いしかしてこなかった俺だけど。

そんな俺でも、自信を持ってお父さんに答えることが出来る。


「凪緒のことが、好きです」

「……本気か?」

「はい」


前は、愛や恋は面倒だって思ってたのに。

今じゃ自分の気持ちに、これほどの自信が持てる。

それってさ、
全部ぜんぶ君のおかげなんだよ、凪緒。


「どんな俺を見ても、凪緒は全力でぶつかってくれた。きっと嫌なことの方が多かったろうに、それでも一緒にいてくれた。

そんな凪緒がそばにいてくれたから、俺も変われたんです。凪緒には、感謝しかありません」

「――そうか」


俺の言葉を聞いて安心したように。

お父さんが穏やかな顔で笑った。
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