クズで冷徹な御曹司は、キケンな沼です

かと思えば「ハッ」と。何を思い出したのか、突然ふきだした。

俺、何かおかしいこと言ったか?


「あの……?」

「いや、すまない。そうだな、響希くんが凪緒を嫌いなわけないよな。

凪緒を預かると君に電話した際、俺は確かに〝一週間後、凪緒をマンションに送り届ける〟と言ったのに、」


――俺の婚約者を、迎えに来ました


「響希くんは、わざわざ家まで迎えに来た。

その時に確信した。そこまでする君が、凪緒を嫌いなもんかってな」

「!」


凪緒がいなくなってから一週間後。

マンションに凪緒が帰って来るのを待てばいいものを、気づいたら丸西家のチャイムを鳴らしていた。

待てなかった……んだと思う。

この目で凪緒を見たいと、走りだしていた。
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