クズで冷徹な御曹司は、キケンな沼です

「今から俺に好き勝手されるのと、城ケ崎と婚約破棄されるの。どっちが嫌か答えろ。もしも前者っていうなら、俺は考えてやっても、」

「簡単だよ。

私は、婚約破棄の方が嫌」

「……は?」


即答した私に、困惑する笹岡。ゴクンと生唾を飲み込んだのか、とがった喉仏が上下した。


「婚約破棄される方が嫌に決まってる。婚約破棄されないなら、私はどうなっても構わない」

「お、前……これから、無理やりだぞ⁉」

「嫌だけど! でも……、決めたの。響希さんと心から婚約者になるって。

まだ叶えられてない。
まだ頑張りきってない。

だから絶対、最後まで諦めない!」

「っ! ……そうかよ、残念だ」


言うやいなや、笹岡は私の首元に顔を近づけた。そしてちゅっ、と。何か所にもキスをしていく。
< 274 / 291 >

この作品をシェア

pagetop