クズで冷徹な御曹司は、キケンな沼です
「今から俺に好き勝手されるのと、城ケ崎と婚約破棄されるの。どっちが嫌か答えろ。もしも前者っていうなら、俺は考えてやっても、」
「簡単だよ。
私は、婚約破棄の方が嫌」
「……は?」
即答した私に、困惑する笹岡。ゴクンと生唾を飲み込んだのか、とがった喉仏が上下した。
「婚約破棄される方が嫌に決まってる。婚約破棄されないなら、私はどうなっても構わない」
「お、前……これから、無理やりだぞ⁉」
「嫌だけど! でも……、決めたの。響希さんと心から婚約者になるって。
まだ叶えられてない。
まだ頑張りきってない。
だから絶対、最後まで諦めない!」
「っ! ……そうかよ、残念だ」
言うやいなや、笹岡は私の首元に顔を近づけた。そしてちゅっ、と。何か所にもキスをしていく。