クズで冷徹な御曹司は、キケンな沼です
「……〜っ」
嫌だ、響希さん――!
静かに愛しい人の名を呼んだ、その時だった。
ガンッ
「最後まで諦めない――か。
よく言ったね、凪緒」
「ひ、びき、さん……?」
なんと、響希さんが図書室のドアを蹴り壊して中に入って来た。
そして、
「いつまで凪緒に乗ってる、早くどけろ。
この子は――俺の大事な婚約者だ」
バキッ
「うっ!」
けたたましい音がしたかと思えば、響希さんに殴られた笹岡は、本棚にぶつかりながら吹き飛んだ。
最後にぶつかった本棚から何冊も本が落ち、笹岡の頭を直撃する。「あ」という短い声と共に、笹岡は意識を失った。
そして響希さんが私の体を起こす。そのタイミングで、安井さんが図書室に入ってきた。かなり走ってきたのか、入校許可証のカードが背中に回っている。
「響希様、凪緒様! よくぞご無事で……!」
「安井、笹岡を連れて行って」
「会社に? それとも警察に、でしょうか?」