クズで冷徹な御曹司は、キケンな沼です
「……」


先輩は、少しだけ私を見た後。「会社へ」と指示をした。


「時山家の裏取引の片棒を担いでる可能性もある。警察にとられると情報が降りてこないから、会社で吐けるだけ吐いてもらう。その後は煮るなり焼くなりだ」

「分かりました、急いで別の車を手配します。笹岡は一旦、私の車に乗せておきますね」


言うやいなや、安井さんは笹岡を担いで図書室から去った。

残るは、私と響希さんのみ。


「凪緒」

「え……あ、えっと……」


何を言えばいいんだろう。
なにから説明すればいいんだろう。

っていうか、どうして響希さんがここに?
朝は、お父さんと一緒にいたはずだよね?

あ、っていうか。

婚約破棄の話はどうなりました?
お父さんと響希さんは、その話をしていたんですよね?


「わ、私……」


震える手を、震える手で抱きしめる。
胸の前で合わせた両手の上に、涙がポタポタ落ちた。
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