クズで冷徹な御曹司は、キケンな沼です

「凪緒は分かってない。俺がキスする度に、凪緒の表情が柔らかくなってることも」

「あ、ぅ……っ」

「俺が〝凪緒〟って呼ぶ度に、嬉しくてピクッと反応してることも。

そして――

そんな凪緒を見て、どれだけ俺が凪緒を愛しく思ってるかも」

「……え?」


響希さん、今……なんて言った?

愛しいって、私に……?


「凪緒は、何も分かってない」

「響希さん、待って……待って、ください……っ」


必死にキスを止める。その間も、私はボロボロ泣いていて……。目の前が見えにくい。

だというのに、響希さんの存在をしっかり感じることが出来るのは……。

寄せあった体から感じるから。
同じ速さで鳴る、二つの鼓動を――


「役に立つとか、俺と釣り合うとか……、違うんだよ。

そんな事しなくても、俺はもう、とっくに、

凪緒を離す気なんて、ないんだよ」


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