クズで冷徹な御曹司は、キケンな沼です

「……えっ?」


思わず、自分がはめている婚約指輪を握り締めた。

そう言えば、いつの日からか響希さんは、指輪を外さなくなった。

以前は家にいる時は外していたのに、だけど玄関になくて。探してみれば、いつも決まった場所にソレははめられていた。


左手の薬指――


そこにチュッとキスした響希さんは「凪緒」と。

私の涙をぬぐった後、視線を交わした。


「俺は凪緒が好き。お互いが高校を卒業したら、約束通り結婚しよう。

ってか、するから」

「い、いつもの〝形だけ〟じゃなくて……?」

「信じられないなら、何度でも言う。

凪緒、俺と結婚して。ずっと一緒にいて」

「……ふ、ふふッ」


幸せで、嬉しくて。

さっきまで悲しみで冷えきった図書室は、一気に温かな温度を取り戻す。


「返事は?」

「はいッ! 宜しくお願い致します、響希さん!」

「……はぁ~。今度こそ、俺の勘違いじゃないよね?」


「いつか勘違いしてたんですか?」と聞き返すと、響希さんはプイとそっぽを向いた。
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