クズで冷徹な御曹司は、キケンな沼です
「海が描いてある横断幕、風チームですね。どうして海がいいんですか?」
「……うん」
答えになってない返事をした後。
響希さんは私を見て、また笑った。
「俺のは思ったよりも騒がしい〝凪〟だったけど、そのおかげで、やっと心地いい場所に出会えたなって」
「?」
凪って、風がなく海面が静かな事だよね?
騒がしい凪って、どういうことなんだろう?
不思議だったけど、先輩は深く説明しなかった。それより「ん」と、私に手を伸ばす。
握り返すと、コツンと当たる婚約指輪。
私が卒業したら結婚指輪に変わってる、なんて夢みたい。
「行こうか、凪緒」
「はいっ」
そうして、二人で学校を後にする。
すると心から婚約者になれた私たちを祝福するように。
風に乗った横断幕が波打ち、夕日を浴びてキラキラ輝くのだった。
❁⃘*.゚