クズで冷徹な御曹司は、キケンな沼です
先輩の目に私が映ることは、限りなくゼロだというのに。
「城ケ崎先輩ってさ、一緒に暮らしてても私を見ないんだよ。目が合わないの」
「わあー。すっごい壁つくられてるね」
「うん。けどね芹ちゃん、私……」
愛はなくとも、せめて。
その「壁」だけは無くしたいって思う。
「いくら形だけの婚約と言えどさ、これからずっと一緒にいるわけだし。お互いを〝いない存在〟と思うのは寂しいもん」
「凪緒……」
芹ちゃんの眉がシュンと下がったのが分かった。そんな芹ちゃんに救われる。
今の私には、こうして話を聞いて、私に寄り添ってくれる人がいるだけで充分だ。
「でも、先輩も凪緒を〝全拒否〟まではしてないんだろうね」
「え……どうして、そう思うの?」
「だって本当に顔も見たくない相手だったらさ。わざわざ一緒に朝ごはん食べないでしょ?」
「!」