クズで冷徹な御曹司は、キケンな沼です
ガチャ
「うわ、なんで真っ暗なの。電気ぐらいつけたら」
先輩は、家に帰るやいなや開口一番。
ドン引きした声を、部屋の隅で小さくなる私に放った。
「お気になさらず……夜景を楽しんでいただけなので」
「俺が不便だって言ってんの」
ピッ
リモコン一つで、透明ガラスが曇りガラスへと切り替わる。
途端に視界から夜景が消え、白一色の部屋が露わになった。
「いま何時ですか……?」
「時計も読めなくなったの?」
「……」
〝も〟ってなんだ。
〝も〟って。
諦めて、自分のスマホを見る。
現在、午後八時。
「先輩……遅いお帰りですね」
まさか「帰ったら私がいるから家に帰りたくなかった」、とか?
ドクンッ
自分で勝手に、嫌な想像をしてしまう。
でもさ。
だってさ……。
好きでもない女が家にいても、先輩は嬉しくないよね。
時山先輩が家にいたら、先輩は飛んで帰って来るのかな?