クズで冷徹な御曹司は、キケンな沼です
「明日の朝ごはんも買わないとですし」


制服のままウロウロするのはマズイかな。

部屋に行って、丈の長いワンピースに着替える。

よし、これでオッケー。


「じゃあ、行ってきます」

「……」


ガチャ、バタン


「ふー……」


閉めた玄関扉に、背を預ける。

私、普通に出来てた?
変じゃなかった?

先輩を見ると、どうしても時山先輩が透けて見える。

学校での、二人の会話を思い出してしまう。


――小さい先輩の方が可愛いし、俺は好きですよ


好きな人には、私以外の好きな人がいて。
私には見せない顔を見せていた。

そんな彼と私は婚約してて、一つ屋根の下で暮らしている――って。


「一体、どこの罰ゲームよ……」


先輩にフラれた私。
私に興味ない先輩。

そんな二人が一緒に住むなんて、お互いにとって罰ゲームそのもの。


「芹ちゃんに〝頑張る〟って言ったばかりなのに……」


ごめん、芹ちゃん。
私、もうギブアップしそうです……。
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