クズで冷徹な御曹司は、キケンな沼です
「ひゃあっ⁉」


いきなりの声。
ビックリした……。

え、っていうか。
聞き間違いじゃなかったら……。


「……っ」


ドキドキする心臓を押さえ、鏡をチラリと見る。

すると、そこに立っていたのは、


「アンタって、本当に時計が読めないんだね」

「城ケ崎、先輩……っ」


ムスッとした顔を浮かべ、私の腕をつかんでいる城ケ崎先輩。

反対の手には、私のスマホが握られていた。


「な、んで先輩がココに……?」

「なんでって。スマホは机に置きっぱなし。財布もキーも玄関にそのまま。なのに取りに帰ってこない、なんて。

こんな夜に一人きりで、
何かあったのかと思うでしょ」

「っ!」


そ、それって、つまり……っ。


「私を心配してくれたんですか?」

「……」


黙ってしまった先輩。

気になって、鏡ごしではなく振り返って直接、先輩を見る。

いつも仏頂面の先輩。
眉間に寄ったシワも健在。

だけど――
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