クズで冷徹な御曹司は、キケンな沼です

「耳、赤い……?」

「!」


廊下の灯りに照らされる先輩。
そこに浮かぶ、淡い赤。


「まさか先輩、照れて、」

「あー、もう。うるさい」


グイッ


「え、わ、わぁ!」


先輩が私の腕を強く引っ張る。

その時、ちょうどエレベーターが到着した。

先輩は「乗るのが当然」と言わんばかりに、私と一緒に乗り込む。中は全面鏡で……再び私たちは、私たちに見守られる形となった。


「なんで先輩まで……って、どこに行くんですか?」

「どこって。アンタが言ったくせに。

行くんでしょ? コンビニ」

「っ!」


ウソ、まさか。
先輩が、私と一緒にコンビニに?

これは……夢っ?


「あ、ありがとうございますっ」

「ほんと、アンタって手がかかんね」


先輩が浅く息を吐いたと同時に、エレベーターが下に着く。

着いた途端、先輩は私の腕を離して前を歩いた。

先輩の大きい歩幅に驚きながら、小走りで後を追う。
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