クズで冷徹な御曹司は、キケンな沼です
「いぃぃ痛いです、ゲンコツやめて下さいっ」


頭頂部に着弾した先輩の拳が、遠慮なく私を攻撃する。重力と相まって、圧がハンパない!

半泣きで許しを乞うと、先輩は「チッ」と舌打ちして離れた。学校で見る王子様は、今や見る影もない。

だけど……


「今回は何もなかったからいいものの。

アンタがいくら猿に近いからって、自分はお嬢様だってこと忘れないで。何かあってからじゃ遅いんだから」


先輩は立ち止まり、後ろを歩く私を見る。


「今、ここで約束して。

俺のそばから勝手に離れるな。

っていうか……

俺の目の届かない所には、もう行かせないから」

「――っ!」

「分かった?」


……、え?
いま、私、何を聞いた?


俺のそばから離れるな?
目の届かない所には行かせない?

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