クズで冷徹な御曹司は、キケンな沼です
分かってる、分かってるよ。
先輩は立場上、私を守らないといけないわけで。
それで、あんな事を言ったんだって。分かってる。
でも、だけどさ。
こんなの、嬉しすぎない――?
「顔、あつ……っ」
「ねぇ、ちょっと聞いてるの?」
「〜っ、ふぁい」
頬をブニッと伸ばされるも、口はにやけたまま。
先輩に引っ張られた所が、ちゃんと痛い。ってことは、これは夢じゃなくて現実なんだ。
さっきの言葉は、本当だったんだ。
「隣で鼻息荒くしないでくれる? 気味が悪いんだけど」
「今は何とでも言ってくださいッ」
「……変なやつ」
頬を触る先輩の手が私から離れる時。
私たちの横を通る車が、ヘッドライトでこの場を照らす。
その時、私は気付いてしまった。
私を見る城ヶ崎先輩が、いつものキツイ目つきではないことに――