クズで冷徹な御曹司は、キケンな沼です
「ッ!」


ただでさえイケメンで光っている城ケ崎先輩が、今日は一段とカッコよくて輝ている。

そんな先輩から、とんでもない笑顔を向けられた。その破壊力、宇宙並み。

今までなかった二人の距離の近さやお揃いの婚約指輪――それらを意識して、のぼせてしまった。


「これからよろしくね、凪緒」

「よ、よろしくお願いします……っ!」


芹ちゃん、ごめんね。
私、一か月前はあんな事を言ったけど、


――ね、お金持ちなんて良い事ないでしょ? この先も悪い事しかなさそうで嫌だなぁ


前言撤回。

お金持ちって、結構……ううん。
どころか、かなりイイかもしれない。



𑁍𓏸𓈒



「わぁ、ここだ。ココ」


梅雨に入り、毎日が雨続き。芹ちゃんは「勘弁してよね」と、部活のテニスが出来ないことに腹を立っていた。

だけど、今の私なら、例え土砂降りの雨でも笑っていられる。

なぜなら、


「今日から城ケ崎先輩と二人暮らし!」


婚約式が済んで一週間。

お父さんから急に「必要最低限の物をこの箱の中に」と段ボールを渡された。
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