クズで冷徹な御曹司は、キケンな沼です
『先輩の、意気地なし』

『……』


あ――と思った時は、もう遅くて。

「こっちに来なよ」という冷ややかな目と声により、私は部屋の中央に正座させられた。



そして冒頭に戻る、というわけです。



「まさか学校で俺のことをつけてたなんてね」

「そんな事しません! たまたま見ちゃったんです。っていうか……私だって見たくなかったし、知りたくなかったですよっ」

「……アンタってさ」


先輩の切れ長の瞳が、冷ややかに私に落ちてくる。

時山先輩に向ける眼差しとは、正反対。


「アンタ、俺にキスしてほしいって思ってる?」

「へ……えっ?」


ポンッと、顔に熱がこもる。
あ、マズイ。

私ぜったい、顔が真っ赤だ……!


「その反応……へぇ。
やっぱアンタって、俺のことが好きなんだ」
< 50 / 291 >

この作品をシェア

pagetop