クズで冷徹な御曹司は、キケンな沼です

鼓動が聞こえるほどの緊張と、それを上回る期待。

先輩が、やっと私を女の子だと見てくれたのが嬉しくて。ふるっと震えるまぶたを、少しずつ下げていく。

だけど――


「あ、一つだけ忠告。

からかってない、とは言ったけど。かと言って本気でもないから勘違いしないでね」

「え、」

「言ったでしょ? 俺はアンタに興味がないって」

「――……っ 」


赤くなった顔の熱が、サッと一気に引いていく。

あぁ、もう最悪。
浮かれてた自分を殴りたい。

婚約者としても、女の子としても見られてないじゃん。

そんな事、分かってた事なのに……。


「先輩は……やっぱりクズ男です」

「俺のこと好きなのに、その言い草はヒドくない?」


クスッと、珍しく先輩が笑った。
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