クズで冷徹な御曹司は、キケンな沼です
だけど笑顔がどこか寂しそうで、怖い。
その恐怖オーラが、先輩の冷徹な性格を際立たせていた。
「好きな人がいるのに他の人と遊ぶ先輩は……嫌いです。軽蔑します。そんな人とキスなんて、こっちからお断りです」
「それで?」
「二度と、私にキスしようと思わないでください……っ」
先輩は知らないだろうけど。
私って単純だからさ、先輩から「気持ちのないキス」をされても喜んじゃうんだよ。胸の奥が、ぴょんって跳ねちゃうんだよ。
でも先輩は、私のことを何とも思ってない。
そんなの……虚しいだけじゃん。
「つまらないなぁ。ちょっと遊ぼうと思っただけなのに。〝一応〟婚約してるんだしさ」
「言っておきますが……。
形だけの婚約者でいようと思ったこと、私は一度もありません。私は……心から、先輩と婚約したいんです」
「……」
だから焦らない。待つ。
先輩の気持ちが、私に向くまでキスしない。してやるもんか!
「やっぱアンタって変だよね」