クズで冷徹な御曹司は、キケンな沼です
「凪緒~、聞いてよ。
私、四つの種目に出るはめになっちゃったー」
「せ、芹ちゃん……」
先輩……なわけないか。
「はぁ」とため息を吐きながら、芹ちゃんと体育館を後にする。
その時、城ケ崎先輩と別れた時山先輩とすれ違った。今は友達らしき人と話している。
「今日も城ケ崎くんへのアタックが止まらないねぇ、彩音(いろね)」
彩音と呼ばれた時山先輩は、可愛らしい顔で「ふふ」と笑った。
そして――
「当たり前じゃん。だって〝あの城ケ崎〟くんだよ? 絶対に私のものにして、家も会社も権力も、ぜぇんぶ時山家の物にするんだぁ」
「ッ!」
え、今……。
時山先輩、なんて言った?
「おぉ怖。城ケ崎くんも知らないだろうね。お嬢様が、こんな物騒な事を考えてるなんて」
「あの子は私に骨抜きだからね。本当の私に気付くはずないって」
「悪い女~」
ドクン――と。
心臓が嫌な音を立てる。