クズで冷徹な御曹司は、キケンな沼です
時山先輩たちの会話は小声だったから、芹ちゃんには聞こえてない。私はアンテナ張ってたから、しっかり聞き取ることが出来たけど……。
でも、聞かなきゃ良かったって……
締め付けられる心臓を押さえて思った。
「え、凪緒。なんで泣いてんの⁉」
「私……泣いてる?」
体育館を出て、少し経った頃。
もう少しで自分の教室に着くという時に、芹ちゃんが私に気づいた。
泣いてるなんて……。
自分でもビックリ。
「そんなに実行委員が嫌だった?」
「違うの……うん、何でもない」
「……そう? なら、ホラ。顔を洗っておいで。少し歩いたら自販機の横に水道あるじゃん? 授業に間に合わなかったら、私が上手く言っておくから」
「芹ちゃん……、うん。ありがとう」
芹ちゃんに手を振り、来た道を戻る。
あぁ、情けない。
なに泣いてるんだか。
ってか、どうして泣いてるんだろう。
まさか城ケ崎先輩を「可哀想」だと思って……?