クズで冷徹な御曹司は、キケンな沼です
「ひ、人が心配してるのに、なんですか、その腹たつ開き直りは……!

っていうか……。

権力ほしさに時山先輩が先輩に近づいてるって、知ってるんですか?」

「そう言ってるじゃん」


いや「言ってるじゃん」って……。

知ってるのに、そんな普通でいられるものなの? 鋼の精神すぎないですか?


「分かったら、俺の事は放っておいて。勝手に哀れまれてもウザイだけ」

「ウザイって……。先輩は、それでいいんですか?」

「……」

「悲しくないんですか……?」


授業が始まり、校舎は静寂に包まれる。

窓を開けてるクラスが多いのか、先生の声が外へ漏れた。


そんな中、無言でかちあう瞳。

珍しく、先輩が私を長い間みつめている。

その顔は……怒っても、呆れてもいなくて。珍しく、表情のない顔だった。

そんな先輩に、この空気に。
いたたまれなくなったのは……私。
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