クズで冷徹な御曹司は、キケンな沼です
「――!」


意地悪な笑顔で、ヒヒヒって笑うつもりだったのに。

城ケ崎先輩と時山先輩が付き合ったらって想像したら……涙が溢れた。


「ねぇアンタ、」

「~っ、すみません! やっぱり授業にでます! じゃッ」


ビュンッ


今、辛辣な言葉を言われたら……心がボロボロになってしまう。元の形に戻せないくらい砕けてしまう。

そうしたら、もうあの家で一緒に住めない気がして……。それだけは嫌で、思わず逃げた。


だって私は、城ケ崎先輩のことが好きだから。


例え先輩の心が手に入らなくても。二人きりになれる「あの空間」だけは手放したくない。私と先輩の、唯一の繋がりだから。

だから婚約破棄はしない。
どんな形であれ、先輩と一緒にいたい――

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