クズで冷徹な御曹司は、キケンな沼です
「とは、言ったけど……」
現在、午後九時。
スッカリ夜になった街だけど、賑わっているからか暗くない。
「そこのお店にどうですか?」なんて。そこら中でナンパが勃発している。
え、私?
もちろんナンパされてないよ。
なぜなら私には、左手の薬指にある婚約指が光ってるからね!
「なーんて。そんな能天気な事を言ってみたい……」
街から少し外れた場所で、家に帰らず外をさ迷っている。
なぜ家に帰らないかと言うと……家に、先輩が呼んだ女の人が来てるはずだから。
そして先輩は今頃、その女の人と――
「わー! やめやめ!
何も考えない、想像しないッ」
頭上の妄想を、パパッと払う。
変な想像したら、喉が乾いちゃった……。
「どこかでジュースでも……あ、そうだ」