クズで冷徹な御曹司は、キケンな沼です


「とは、言ったけど……」



現在、午後九時。

スッカリ夜になった街だけど、賑わっているからか暗くない。

「そこのお店にどうですか?」なんて。そこら中でナンパが勃発している。

え、私?
もちろんナンパされてないよ。

なぜなら私には、左手の薬指にある婚約指が光ってるからね!


「なーんて。そんな能天気な事を言ってみたい……」


街から少し外れた場所で、家に帰らず外をさ迷っている。

なぜ家に帰らないかと言うと……家に、先輩が呼んだ女の人が来てるはずだから。

そして先輩は今頃、その女の人と――


「わー! やめやめ!
何も考えない、想像しないッ」


頭上の妄想を、パパッと払う。

変な想像したら、喉が乾いちゃった……。


「どこかでジュースでも……あ、そうだ」

< 66 / 291 >

この作品をシェア

pagetop