クズで冷徹な御曹司は、キケンな沼です
「……」


先輩の背中に、耳を当てる。

トクン、トクンと規則的な音。
ドッドッド、な私とは正反対。

それが答えだよね。
私に「好き」と言われても心臓の音一つ変えない。それが先輩の気持ち。


「アンタってさ」

「はい」

「よく〝バカ〟って言われない?」


……はい?

なんの話?と背中から耳を離す。

そして「聞き間違いですか?」と、先輩の顔を横から覗き込んだ。

すると、


ちゅっ


「んっ!」


なんと、先輩からキス。


「え、あ……え?」

「その顔。ほら、やっぱりバカ」

「っ!」


そのとき目に写ったのは、先輩の笑顔。


「今の、何のキスですか……?」

「それが分からないのもバカ」

「そ、んなの……」


分かるわけないじゃないですか……っ。
< 76 / 291 >

この作品をシェア

pagetop