クズで冷徹な御曹司は、キケンな沼です
複雑に感情が交差して、ボヤッと視界が霞んでいく。
先輩の肩に乗る私の手。そこにはまる婚約指輪が、霞んだ世界の中でキラキラ光った。
「……来てないから」
「え?」
「朝の電話の人。断ったって言ってんの」
「そう、だったんですね……」
私の左手にある婚約指輪。本来なら、先輩にも同じ物がついてるはずなのに。
学校が終われば、先輩はさっさと外す。
だから今も、先輩の婚約指輪はお留守番。
先輩にとって「婚約」は、表向きだけ。
私のことを「バカ」呼ばわりするし。
すぐ怒ってため息をつく、最低のクズ男。
だけど……
私が困った時は助けてくれて。
私が嫌がる事は、しないでくれる。
それって、なんだか。
先輩の頭の片隅、ほんの一ミリくらいには私がいるって……己惚れてもいいのかな?
「先輩、どうしましょう」
「なに」