クズで冷徹な御曹司は、キケンな沼です
「俺の日常が、アンタのせいで崩れてる。だから嫌い。今日だって、女性と会うつもりだったのに」

「つもりだったのに?」

「アンタが…………って、言わないからね」


私に誘導されてると気づいたのか、先輩は口を閉じる。

ちぇ。もう少しで、先輩の気持ちを聞けると思ったのに。

……でも、いいや。

先輩が〝家に女性を呼ばない〟って約束を守ってくれた。それだけで、とっても嬉しいから。


「先輩、降ろしてください。もう大丈夫です」


本当は、まだ先輩を近くに感じていたい。でも、すみません。

自分の衝動を抑えきれなかったの――


「先輩、キスしてもいいですか?」

「……」


いま先輩の心に、少しでも私がいるなら。
この瞬間を私は逃さない。


「……キス、したいの?」
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