クズで冷徹な御曹司は、キケンな沼です

「ふ、ぅ……っ」


嬉しすぎるからか、生理現象か分からない涙が、ぽろりと零れた。


「本当、アンタって変」

「へ、ん……っ?」

「気が強いくせに、泣き虫なんだから」


頬に置かれた先輩の手が涙をぬぐう。

唇も頬も、先輩の体温が移ってクラクラ。

この幸せな時間、夢じゃないよね――?


「――……っ、はぁ。

はい終わり。分かってたけどアンタ、キス下手すぎ。もう少し練習……って、ねぇちょっと。意識ある?」

「ふ、ふえぇぇ……」


罰ゲームという名の幸せなキス。
それは私の知らない大人のキスで……。

のぼせてしまうには、充分な刺激だった。


「しぇ、先輩~……っ」

「はぁ。本当、気が強いんだか弱いんだか」


言いながら再び、先輩は私を持ち上げる。

だけど、さっきみたいなおんぶではなくて……女の子なら誰もが憧れる、お姫様抱っこ。
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