クズで冷徹な御曹司は、キケンな沼です
「あー、わかった分かった。無理に強がらなくていいから」

「だから、本当だってっ」

「へいへい」


笑いながら笹岡は「いいから、つむれ」と。自分の目を指さした。

あぁ、顔を拭いてもらってるんだった。途中からガンガン目を開けてたよ。


スッ、と。私の視界が再び暗くなる。

すると笹岡は屈強な体に似合わない優しい力加減で、私の顔をポンポンと拭いていった。


「なぁ丸西。もし俺が〝何か理由があって〟お前を同じ実行員に推薦したとしたら――」

「ん? 何かいった?」

「……いや」


なんでもねーよ、の声が聞こえて、私の顔からハンカチが離れる。

だけど――


「……」

「……笹岡?」


私たちが汗ばむくらい強い日差しが降り注ぐ、良き晴れの日。

そんな中。

笹岡の顔に浮かぶのは、曇天。
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