クズで冷徹な御曹司は、キケンな沼です
ガチャ
「ただいまかえり……あっ、シーだった」
先輩は仕事中なんだから、邪魔しちゃダメダメ。そーっとしないと。
静かに靴を脱ぎ、静かにカバンを降ろし、静かに牛肉をキッチン台へおろす。
物音一つ。ホコリ一つ飛ばない静かな動き。
完璧!
「牛肉、どうすんの?」
「わぁ⁉」
姿が見えないのに、いきなり声が聞こえてビックリ!
見ると先輩は、部屋の真ん中にある円柱の向こう側にいたみたい。円柱の周りにソファがグルリとあるから、そこに座ってるのかな?
「い、いたんですね。っというか、その位置から牛肉がよく見えましたね」
「俺〝目が良いから〟」
「へぇ、先輩の新情報ゲットできました!」
ニッと笑った時、やっと先輩が柱の影から出て来た。その顔には、ニッコリスマイル。
え……、スマイル⁉
「先輩、何かいい事があったんですか?」
「なんで」